2024-03-20

社会に浸透してこその量子力学

 物理学者が主催する勉強会に参加してきました.


実社会に役立ってこその物理学という思想を掲げられており,

全くその通りだと思って,

今後も定期的にこの方の元で,学ばさせていただきたいと思った次第です.


今回の内容というかここ数ヶ月のトピックは,量子力学.

ニュートンとの結びつきが色濃い古典力学とは,

区別されることが多く,また,直観では理解しがたい概念を扱っていることもあり,

基本的に,難解な学問分野というイメージが強いと思います.


私自身も理解できていない分野で,

かつ,扱っている研究で使用している機器が,スピンと直結するMRIということもあり,

この機会に,習熟したいという想いもあり,参加に至りました.


内容は高度でしたが,高度過ぎて次の講義への参加に抵抗感が出るような会ではなく,

また来月も参加しようと思える趣旨の会でした.

というのも,主催されている学者の方は,

難解なイメージを持つ学問分野が,人々の行動レベルにまで浸透する,

つまり,実社会に役立つようになるには,

直感的に理解できるように言語化していく責任が,理解しているものにはある,

という信念に基づいておられたからです.

医学という異なるバックグラウンドを持つ私にも理解できるよう,

イメージできるような説明を随所に混ぜてくだり,

もう一度,量子力学という分野に挑戦したいという気持ちになりました.

感謝です.

(ちなみに,これまで20冊以上の量子力学に関する書籍を購入してます.

購入しては,やっぱり難しすぎて断念ということを繰り返していました.)


知的好奇心を満たすだけではなく,

より良い社会に貢献していくための学問という視点を持って,

量子力学の壁を突破していきたいものです.





2024-03-09

祖父を懐う

 今日は,祖父の命日(一周忌)です.

亡くなる半年前までは,祖母と元気に旅行に行くような祖父だったので,

まさかこの1年半で,祖父が体調を急激に崩すとは想像もしていませんでした.

そんな時期にちょうどぴったり重なるように,

私は,日本を離れ,海外留学中でした.

そして,ちょうど留学を終える帰国の準備をしておりました.


最後のときが近づいていたことは薄々感づいましたが,

フライトを取るタイミングと帰国の準備とのバランスを取るのが難しく,

あと数日という時期に,オーストラリアからのフライトを急いで確保したのですが,

万事休す.

空港に向かうタクシーにちょうど乗るタイミング,訃報を受け取るという,

あと1日早く帰国できてたら,


当時は,動揺と後悔の念でいっぱいでしたが,

時間とともに,落ち着いて,前向きに,この出来事を受け止められるようになりました.


最後に,祖父の温かい手を握って,感謝の思いを伝えられなかったことが,

本当に本当に悔やまれます.

が,振り返ると,たくさんの思い出を作れたので,

美しい時間を共有できたなぁと実感します.

そのような時間を持てたのも,

90年間介護を要するような病気もせず,健康に過ごしてくれた祖父のおかげです.


大切な人との最後の時を想像して,日々行動することは,簡単ではないですが,

祖父の命日は,DIE WITH ZERO(https://rb.gy/to2i29)の書籍とともに,

密度の濃い人生を送るための起点としていきます.









2022-01-20

人とつながる技術

振り返ると,とても人に恵まれて,

これまでやってこれたなぁと思います.


何かを達成するには,

努力論が正しいと思い込んでいた時期のほうが,

まだ長いですが,

最近は,努力によって,一人でできることもたくさんある

とは思いますが,

一人の努力ではどうにもできないこともあるなとも感じます.


天才は,全体から見たら圧倒的少数なので,

一般的に,人生の確率を上げるには,

人とのつながりを,自ら作れる技術を,

意識して身に着ける必要があるじゃないかと,

実感します.


これから先,人とつながる技術も磨いていきたいですね.

2012-01-09

遅ればせながら、新年のご挨拶。

「幸福な家庭はどれも似たものだが、
不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」
 (「アンナ・カレーニナ」トルストイ、中村融訳、岩波文庫)

幸福な家庭→健康
不幸な家庭→病気

安易な一般化に走らないように。
一つ一つ丁寧に。

心に留めておきたいものです。



今年も、よろしくお願いします。
by sumolovers
  (1月は大相撲やってます。8日から22日まで。
 NHKではだいたい16時〜18時までやってます。観戦しましょう!)

2011-12-27

2011年の講義終了!10-12月の講義を振り返ってみました!

臨床系講義(注:参照)の先生を3パターンにカテゴライズしてみました!
印象として、Bグループの先生がちょっと多すぎるんで、
そこがもうちょっとAグループに食い込んでくれればなぁ、と思います。


・Aグループ

このグループの先生は、
医師国家試験(国試)という目先の目標にとらわれることなく、
臨床医になってからも役立つ講義をしてくれます。
メッセージ性の強い講義なんですよね。
今月始めに受けたある講義では、
ある点滴をするときに、絶対忘れちゃいけないこと、
ベッドで長時間同じ姿勢で過ごすことになるとき気をつけなければいけないことなどを
これらがよく起こりやすい病気と関連づけて教えてもらえ、
臨床医として現場で動ける知識を身につけられました。

長期的に生徒のことを考えてくれてるなぁってことをすごく感じます。


・Bグループ

医学部には、このグループの先生が一番多いです。
国試に役立つ講義をする先生方になります。
講義自体はわかりやすいです。

ただ、このグループにおける問題点は、習ったことがすぐに頭から抜けてしまうことです。
つまり、臨床の現場で使える知識はあまり習わない。
きっと試験のために事実を整理し直して、それを教えていることが問題なんだと思います。

イメージとしては予備校の講師ですね。
わかりやすいし、模試の点数も上がる。
ただ、受験が終わるとあっという間に頭から抜けている。
あれ、あの先生から何習ったっけ?って感じで。
医学部の場合は、模試=通常の試験、受験が終わる=国試が終わる、になりますね。

Aグループの先生が長期的だとすると、
このグループの先生は短期的に生徒をみているなあという感じを受けます。


・Cグループ
このグループは、教師としては問題外の方々ですね。数は少ないです。
研究者としての実力はどうなのかはわかりませんが、
少なくとも生徒の前に立つべきではありませんね。
事実の羅列が得意技。
(国語の授業でいえば物語・小説を棒読みする先生。配布資料やスライドの文章をその通りに読むだけ)
講義めんどくさいオーラを出すのもこのグループの教師が一番多いですね。


始めにも書きましたが、医学部にはBグループの先生が多いです。
というかほとんどです。
ただ、これはシステムの問題であり、教師の問題じゃないと思うんですよね。

というのも、日本の医学部は、国試の合格率で
「いい医者をつくっている」大学か「そうではない」大学かを評価するので。
大学にいる先生方もその評価基準にあわせて講義しちゃうんですよね。
なんでこのシステム下では仕方ないことなんですね。

だから、今日の朝日新聞一面の
福島原発の事故調査・検証委員会の中間報告の記事にあるように、

「関係者の責任追及は目的とせず、組織的・社会的な背景を明らかにする方針で(今回の調査に)望んだ」

こういう視点をもってこの現状を捉えていくことを僕は望みます。

Take It Easy!


注)臨床系の講義・・病気になるしくみ、治し方、その治療の結果を中心に勉強します。
          現実感のある講義です。対義語のようなものは「基礎系の講義」。

2011-12-02

なぜ僕たちは白衣を着るのか?

よい影響を与えてくれる教師はよい問いも与えてくれます。
今週、ある先生が、
「なぜきみたちは白衣を着るのですか?」と。

(先生は、問いの内容には触れず
「考えてください。一年半後に始まる臨床実習でもう一度聞きます。」
とだけいって授業を終えました。)


僕は、
患者さんときちんとしたコミュニケーションをとるためだと思います。


なぜなら、医療の始まりは、多くの場合、
診察室での患者さんとのコミュニケーションから始まるからです。
そこで患者さんと交わすコミュニケーションなしには、医療を行うことはできません。

そのコミュニケーションの中には、
白衣を着た医師からの無言のメッセージも含まれていると僕は思います。

「あなたに危害を与えるようなことはしません。」
「安心して悩みをお話ください。」

こういった無言のメッセージを、
まず白衣を着た医師が患者さんに送り、
そこからコミュニケーションが始まっていくのだと思います。

病棟、回診などでもこれは当てはまると思います。



また実際の医療現場を頭の中で思い浮かべてみると、

きっと患者さんは、
診察室、病棟などで白衣をきている人を
医師として認識すると思います。

つまり、
医療現場で、白衣を着ている人はすべて医師としての役割を期待されます。
その役割とは、
医学における憲法であるヒポクラテスの誓いにあるように、
「患者さんのために尽くすこと」です。

それを果たすためにも、
きちんとしたコミュニケーションは欠かせません。

そして、そのきちんとしたコミュニケーションをとるために
医師は白衣を着ているのだと思います。



今週は、
臨床医学を踏まえた授業をいつもよりたくさん受けることができ、
とても中身の濃い一週間を過ごせました!


それでは、皆さん、よい週末を。
Take It Easy.

2011-11-21

ブックレビュー「誰も教えてくれなかった診断学」


診断とは何か、を理解できるだけでなく、
臨床医が、普段どこに思考力を使っているかも学び取れる、そんな本です。

また、ただ単に診断学についてだけではなく、
日本の医学教育の弱点、それをどうしていくかの方向性も示してあり
一石三鳥の本です。

知識の整理を、カードづくりに例えているところが印象に残りやすい。

臨床系の講義が始まる前にさらっと目を通しておくだけで、
かなり講義の中での、目のつけどころが変わると思います。

個人的には、夏休みに読んでおけばよかったとすこし後悔。

これからの勉強の仕方・講義の受け方・教育の改革方法
これらを考える上でとても役立った本です。

以下、僕の目にとまったフレーズ集です。



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ヒトが思考作業を行う場合に、一時に扱える情報の数は最大で7個程度であることがわかっている。

有用なマニュアルやテキストは、「生きカード」の『かたち』で医学知識を提供している。
新しいマニュアルが屋上屋を架すがごとく出版される理由は、新しい医学知識を提供するというよりも、新しい視点の切り口(clinical problem = インデックス)のカードを提供しているという意味が大きい。

誤った「常識」

医学部の教育では、伝統的に発病メカニズムが医学的に興味深い疾患を重点的に教える傾向があり、疾患の頻度は重視していない。このため医学生に鑑別診断のリストを作らせると、稀な疾患ばかり挙がってきてしまう。

鑑別診断のリストを優先順位に考えるのは、「頻度」「時間」「アウトカム」の3つの軸である。

臨床医は偽陰性により疾患を見逃せば直接的な害を受けるので偽陰性には敏感であるが、
偽陽性は間接的で無視されやすい。

今のところわれわれがベストだと考えている診断推論のトレーニング方法であり、以下の3段階からなっている。
1)手持ちの「生きカード」を増やす。
2)適切なカードにたどりつく訓練を繰り返し行う。
3)診断を確率的に考える訓練を行う。

診断とは患者が疾患を持つ確率を変化させること。

結局、偽陽性の対応が医療のコストを押し上げ、医療資源を枯渇させることになる。

筆者らが本書で提唱したいことは、患者の「訴え」や医学的問題点をいかに適切なカードに落とし込めるかの反復練習を、わが国の臨床医学教育の場に導入することである。

違和感を大事にしよう。おかしい、自信がないと感じたら、直感的に心に浮かんだ診断に固執しない。

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Take It Easy.